カウリスマキの都市と渋谷

《1》ビル群の衝撃

先日、友人とアキ・カウリスマキ監督の『コントラクト・キラー』という作品を観た。観るのは3回目で、友人は初めてであった。

別に『コントラクト・キラー』は、カウリスマキ作品の中でも特に評価される作品ではないと思う。

後述するように、悪気はなくある国民のプライドに多少影を落とし話題を呼んだことはあった。ただ、それは居酒屋談義になる程度の話題だったと思う。

3回目を観ようと思ったのはただなんとなくであり、カウリスマキ作品を見たことがない友人に彼の作品を勧めるにしても『ルアーヴルの靴磨き』『過去のない男』など他に有名な作品はあった。

それに正直、作品のトータルでの仕上がりはこの2作品の方が上だと思う。

しかし、今回観た『コントラクト・キラー』の、特にファーストショットは他のどのカウリスマキ作品のそれよりも素晴らしく感じた。

恐らく朝なのであろう、青みがかった画面。左奥には建設途中のビル群が映る。高さはまだらで、遠く連なる連山を思わせるかのようにぼやける。どれも下部はしっかりとビルの様相であるが、上部に置かれるクレーンはこれからの成長をうかがわせる。

画面中央に川を挟み、手前には地上で不規則に稼働するクレーン。太陽によって赤みを帯びた雲、揺れる水面はそれらを引き立てる。

シーンが変わり更に風景が続くのだが、暫くは冒頭の衝撃が抜けないでいた。


※手前に見える建物は築地市場。奥には屹立するクレーン

観るのが3回目であるにもかかわらず、この描写にここまで衝撃を受けたというのは、今の心象と上手く重なったからだ、と後から気づいた。

建設途中のビル群…。

完成された像のみが人々の心を掴むわけではない、と実感させられた映像である。

※二子玉川、ビル群

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